「俊介が、小嶋 彩美と抱き合ってたからだよ。失恋しちゃったからだよ…」


「メディアはゴシップネタが大好物みたいですね。僕と彩美は確かにお付き合いしていましたが、もう8年も前の話です。よき理解者でもあり、ライバルでもあります。まあ…今はもうライバルだなんて言えませんが…」


「でも、また付き合うんでしょ?」


どうせなら、こてんぱんに振られてしまいたい。潔く、諦める為に。


「それは…」


言葉を濁す彼に、胸のズキズキが比例する。

あーぁ、馬鹿みたい。黒い感情に呑み込まれて、もう全部投げ出してしまいたくなった。


「もう、切るね…。夜遅くにごめんなさい。さようなら…」


俊介の声を聞かないまま終了をタップして、携帯をベッドへ放った。


もう、終わりなんだ。

会えないんだ。

好きだって、やっぱり最後に伝えておけばよかった。


大好きなのに。すごくすごく、大好きなのに。



「無理だよ…」


クッションを抱き締めて、思いっきり泣く。


『それは…ブロークンハート症候群ですか?』


息が出来ないくらい、苦しい。


苦しい、苦しい、苦しい…


彼じゃなきゃ嫌だって、強く思うのに。


気持ちは誰にも負けないって思うのに。



彼は、私を好きじゃない。


それが、現実だ。


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