「もし、だけどね。」
ゆっくり、あたしの目を正確に捉えながら話す彼は、
「もし、他の部屋を使うことになったとしても。そうなった場合君は多分、五階にはこれなくなるよ。」
確実に、あたし絶望に突き落とす。
『どっ、して…』
もう動揺し過ぎて呂律が怪しくなって来た。”五階にこれない”つまり、そしてどっちにしてもこの場所には来れなくなるということだ。
そんなの、そんなのあまりにも酷過ぎはしないだろうか。
「あぁ、一応君は知ってるんだろうけど初対面だよね。自己紹介しないとね。」
この人の名前なんて、知らない人はいないだろうに。少なくともこの学校になんて、絶対。
「俺の名前は“安達 康夜(アダチ コウヤ)”………龍陽のトップだよ、よろしくね」
県のナンバーワン。西日本をおさえる力があると言われている、龍陽。
