それに気がついたミカは慌てて、
「何で? 光一が泣くの? 私は…」
光一が自分の辛さを一瞬で感じ取ってくれた事を理解したミカだったが、何て言ったらいいのかわからずに黙っていると。 桐山が、ミカの肩に手を置いてこう言った。
「ミカさん、この先輩はね、少し楽観的で落ち着きが無いところがある。 しかも、若干ひきこもり気味でさらにはロリコンだ。 けどね、見ての通りの心の優しい人なんですよ。 だから、私は先輩を尊敬できるし、好きでいられるんです。」
ミカは光一を見た。 そこには、損得やかけひきなんて考えていない様子の、一人の男がいるのみだった。
「光一、ありがとう。 素直に話して良かった。 なんだか気持ちが楽になったよ。」
ミカは再び光一に抱きつくと、
「大好き、お兄ちゃん。」
光一は相変わらず泣いたままだが、ミカと桐山は穏やかな笑みを浮かべていた。
「二人共、少し待ってて下さいね。紅茶を煎れて来ます。心が落ち着きますよ。」
そう言うと桐山は奥に、光一は泣き続け、ミカはずっと光一に抱きついていた。 世間の喧騒など関係無いかのような、穏やかな時間が店内には流れているのだった。