獣は小鳥に恋をする





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放課後



オレンジ色の光が教室に注ぎ込む。



澪は誰もいない教室で、一人葵が帰ってくるのを待っていた。



伸ばした手は、まだ持ち主の現れない鞄のかかった机へと。



そっと触れる。



温度のない無機質なものはあまりは好きじゃない。



(まだかな...)



そんな事を思いながら、澪は自身の席につき、いつも彼がやっているように机に伏せて待った。



そして



最近葵の事ばかりを考えて寝不足だったせいだろう。



いつの間にか睡魔にのまれ、そのまま夢の中へとおちて行った。







夢の中で澪はある一匹の猫と一緒にいた。



広い空間にたった二人。



その距離はとても遠かった。



特に何も話しかけることはない。



それでも少しずつ少しずつ、澪は彼の領域に入っていく。



はじめこそ猫は警戒心を前面に出していたが、共にいる時間が長くなるほどそれが薄れていく。



少しずつ自身の領域に踏み込んでくる澪をじっと見つめているだけ。



これでいい。



もう少し、もう少し



そう思いながらたっぷり時間をかけでほんの僅かな距離を詰めていく。



そして



ある一歩を踏み出した瞬間



猫はスルリと身体をしならせ澪の隣から居なくなった。



離れていく猫を目線で追う。



随分と離れた場所で



表情もはっきり見えないくらい遠い場所で



澪を見つめていたのは



猫ではなく、



金髪の小さな幼い少年だった─────