獣は小鳥に恋をする





あれから今日まで三日連続でこの調子なのだ。



朝のホームルームまでは確実にいるのだが直後に出ていって帰ってこない。



今朝、席から立ち上がった葵に澪は



「如月くん、授業でてないけど大丈夫?体調が悪いの?」



と尋ねてみた。



しかし僅かに立ち止まるものの、何も返すことなく出ていってしまった。







結果、残された澪は現在菫に励まされているというわけなのである。







どんよりと沈んでしまっている澪。



「やっぱり私のせいかなあ...しつこ過ぎたのかなあ」



「まあそうなんじゃない?」



菫の一言にさらに落ち込む。



人を嫌う動物たちと接するとき、何よりも大切なのは距離感だ。



距離をとり過ぎると壁を取り払うことはけしてできないし、かといって近すぎてはかえって怖がらせてしまう。



適度な距離感を保ち、怖がらせないようにけれど自分が敵ではないと示していく。



それを何時間も何日も、何週間でも、時には何か月でも、長期間忍耐強く続けることが鍵なのだ。



そうやって澪は何匹もの人を怖がる動物たちと触れ合ってきた。



その感覚には自信があったのに。



「やっぱ、澪の勘違いだったんじゃないの?結局はただのヤンキーだって」



「そう、なのかな...」



口ではそう言ってみるが、それでもやっぱりあの時見た瞳は間違いじゃないと思ってしまう。



あれは孤独を望み他の何物も信じようとしない瞳だった。



少なくとも澪にはそう感じられた。



手を伸ばしたくなるのだ、そういう子を見てしまうと。



この気持ちはただのお節介?



ただの偽善的な思いだろうか?