獣は小鳥に恋をする












「如月くん、おはよう」


「...............」


「授業始まっちゃうよ」


「...............」


「次移動教室だからね」


「...............」


「隣の人とレポート作ってって」


「...............」


「ちゃんとご飯食べてる?」


「...............」








ガタン



「あっ」



スタスタと教室を出ていく。



「あーあー逃げちゃったあ
 澪のせいでえ」



「はあ...」



あの日から澪は、ことあるごとに葵に話しかけるようになった。



そして昼休みに入った今も声をかけたのだが、逃げるように教室を出ていってしまった。



澪は肩を落として落ち込んでいる。



菫は大好きなミルクティーを飲みながら、そんな姿を目を丸くして見つめる。



「...どうしたのよ澪。あんた最近変よ?」



まあもともとちょっと変だけど。



普通の男子にすら話しかけることは滅多にないのに、よりにもよって誰一人話しかけようとしない葵にあんなに積極的になるとは。



もしかして



「あんた如月の事、好きなの?」



「ええっ!?ち、違うよー!!」



顔を真っ赤にして顔を横に振る。



まあそうだろう。



このピュアピュアな子がもし仮に葵に恋したとして、あんなに積極的に話しかけられるはずがない。



「そう、じゃあなんで急に如月に構うようになったのよ。何?授業で当てられた時に助けてもらうために仲良くなろうとかそういうあれ?」



「え、ううん。そういう事は考えてないよ。もう授業は自力で頑張るって決めた!」



両手でしっかり拳を作ってやる気をみなぎらせている。



こういう小さな動きがいちいち可愛い。



本人は気づいていないが、澪は何気にモテる。



男子にも女子にも。



授業中にあてられ困る澪を助けることを口実に近づこうとする男子が後を絶たなかったが、今回はまさか澪から動き出すとは。



予想外のできごとに困惑していたのは菫だけではない。



澪を狙っていた男子たちも澪が葵に話しかけるたびに明らかにそわそわとしていたのだ。



先程の澪と菫のやりとりに彼らがひとまず胸をなでおろしたの言うまでもない。