獣は小鳥に恋をする





ぎろり



「!!!」



金髪の髪の隙間から葵の瞳が、澪をとらえた。



その瞬間体がびくりと固まる。



獣に睨みつけられた小動物のように体が射すくめられた。



そんな彼女を他所に、葵はゆっくりと席から立ち上がりぼんやりと黒板を見つめる、



「如月やっと起きたか。ほら、前に出てこの問題解け」



椎名がそういうと、ダルそうに頭をかきだらだらと黒板の前に進み出て問題を数秒間ジーっと見やった後、おもむろにチョークを手に取って黒板に解答らしきもの書き始めた。



クラス全員の視線が葵の手元へと集まる。



カンッ



チョークが黒板に一際強く当てられ高い音が教室に響いたのと同時に、葵は自身の席へと戻りそして再び眠りを再開する。



乱れた文字で書き記されたそれは完璧な回答。



「正解、だけど寝るなー」



椎名の声は完全無視。



既に寝息まで聞こえる。



呆れるような声があちらこちらからあげられる。



しかし澪はそれどころではなかった。



(なんだったんだろう...あの目...)



澪の脳内を占めていたのは、声をかけたときに見せた葵の瞳。



何物も受け入れない



感情が何も感じられない



真っ黒な瞳。



不思議と怖くはなかった



ただ



力のないその瞳が



どこか怯えたように見えたんだ。



────────



きっとこの時からだろう



如月葵という人間に惹かれたのは



知りたいと思った。



その瞳の奥に隠れる孤独の理由を



どうしてそんなに怯えた顔をするのかを



彼は本当に、噂に聞くほどの男なのか



────────



小鳥の小さな瞳が



群れを嫌う獣を見つける



何者も寄せ付けようとしないその心を



溶かしてあげたいと、そう思った