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それはたまたま



そう、偶然だった。



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月の始めに行われる席替え。



仲良しの子や、気になる異性と近くになるかもと、誰もがドキドキと胸を高鳴らせる、月イチのお楽しみ。



くじ引きで行われるそれに、自身のありったけの運をかけてみれば......



(知ってる人が誰もいないーー!!!)



教室の一番後ろのそれもグラウンド側の一番端。



吉塚 澪(よしづか みお)は、顔見知りが周りに誰もいないその席に嘆いていた。



「良かったじゃん、超ベストポジションじゃん」



紙パックの紅茶をストローでチューチューと吸い上げながら、友達の久遠菫(すみれ)がそう言った。



「良くないっ!周りに知り合いが一人もいないんだよ!?授業で当てられた時誰に頼ればいいの!?」



「まあそれは、澪にとっちゃあ死活問題だね」



あんた頭悪いから。



学食で買ったメロンパンを口にしながら、同情するように頷く。



「もうどうしよう......」



悩む澪に菫は「視力悪いからって代わってもらえば?」と言っては見るが



「無理だよ、私両目2.0だもん、クラスで断トツ視力いいって先生知ってるもん......」



と、自爆に終わり、一層どんよりと沈んでしまうのだった。