俺、九十九 秋名《つくも あきな》はとある事情から一人暮しをする事になった。
わくわくと不安が半分ずつ支配する俺の脳内は緊張でパンク寸前だ。




それで肝心の住む場所だけど、それは一応何とかなった。金の無い貧乏高校生の俺は高校から近いアパートを借りた。
出来ることならこんな見るからに怪しいアパートに住みたくはなかったさ。




木造の二階建てで部屋は八室ある。
そのうちの104号室が俺の部屋だ。
部屋には備え付けのキッチンと何故か電子レンジのみで後は無し。トイレはあるが風呂は共同という地獄。
おまけに104号室は曰く付きらしい。





「……なんでこんな事になっちゃったんだろうな」



「ふんふん。来てそうそう、悩み事ですかな?青少年」



「ひゃあああっ!」



男だというのに情けない声を出してしまった。声を掛けてきた人物は反応を見て爆笑していた。
河合荘の103号室、つまり俺の隣に住むこの人、雨宮 七星《あまみや ななせ》さんはよくからかって来る人物。茶髪でボサボサの髪をポニーテールにしている。目が悪いらしく眼鏡をしているが本人曰く眼鏡を掛けると落ち着くらしい。歳はあくまで20才らしいが嘘だろう。スラッとした体格に熊さん柄のTシャツ。胸は大きく熊さんが大惨事になっているが本人は気にしてないみたいだ。




「や、止めて下さいよ!全く……七星さんは」



「あははは。アキ君が人生のドン底に落とされたような顔をしてたから思わずイタズラしちゃった」




プルンとした唇に人指し指を乗せ、ウィンクする七星さん。不覚にも俺の心臓が高鳴った。



「人生のドン底って……」



「それよりさ、アキ君。明日から高校だよね?荷物とか作業は終わったの?」




なんでそんな事を聞いて来るんだ……。
教えたく無い、でも教えなかったらそれはそれで大変な事になりそうだ。



「はぁ、作業は終わりましたけど?」



「さっすがぁ! んじゃ、今夜は105号室に集合だからね」




…………ハ?
いきなり過ぎて意味が分からない。
そもそも俺は行くなんて言ってない。



「ちょっ、いきなり過ぎますよ」



「ダメダメ。新人は強制だから……忘れずに来るんだよ? じゃ」



強制的に話を終わらせると自分の部屋に入ってしまった。