「空、準備できた??」
「うん、いつも待たせてごめん」
「いいから。後ろ乗れよ」
自転車の後ろに空を乗せ、学校の前の坂道を下る。
二人乗りは禁止されているから、もちろん裏口から出発。
少し遠回りになってしまうけれど、その分長く一緒に居られるのは嬉しかった。
「凛空、お母さんがおかず作りすぎちゃったからおいでだって」
空の母さんが、わざとおかずを多く作ってるのは分かってる。
今日は看護師である母さんが夜勤で、俺が自分で飯を作らなきゃいけないことを分かってるから。
ホントに、ありがたいよな。
「シャワー浴びたら行くわ、お前ん家汗臭くなんないようにな」
「さっきシャワー浴びたんじゃないのー??」
「あれは仮シャワーだろ??部室のシャワーなんか、頭洗って終わりじゃん」
「えー??臭くないよ??」
そう言って自転車の後ろからクンクン俺の背中の匂いを嗅ぐ空。
とても女子高生がやることとは思えないが、空にとって俺は彼氏とはいえ兄妹同然だからなのかな。
恥ずかしがることもなくそんな行動をとっている。
「あんま匂い嗅ぐなって。お前の鼻いかれるぞ??」
「いかれないよ~!!こんなんでいかれたら部室なんか入れないって」
「はぁ??部室臭いか??」
「くっさいよ~!!雨の日とか特に~!!」
こんな風にどうでもいいことを話しながら帰るこの時間が、俺の生活の一部だった。
大好きな大好きな時間だった。
