当時、私はこの本の意味が分からなかった。


ナチスや、ユダヤ人、それに宗教、幼稚園の子供には難しい単語ばかりだった。




そのせいもあってか、高校に入り再びこの本をめくったとき、涙がとまらなかった。


なぜかは分からないが、手放してはいけない気がして、今日もこうして鞄の中に入っている。






「杏奈ー!次移動だよー?」


「あっ、ほんとだ!やば!」




既に準備ができている志帆に置いて行かれないように、机から教科書を引っ張り出して志帆のもとへ駆け寄った。