あれ、私どうしたんだっけ?




……誰?


誰かが私を呼んでる。




「……おい……アン!いつまで寝てんだよ!」




ゆるゆると重い瞼を開けると、目の前に広がっていたのは鮮やかなエメラルドグリーン。


アンの瞳と同じ色のそれは、優しい眼差しで私を見つめていた。




「おはよ、アン。」


「……おはよう、リダ。」




あぁ、そうか。


私は今アンとして、アンの記憶を見ているんだ。






……この人がリダ……


アンが生涯、誰よりも愛した人。




「今日は山に木の実を採りに行くんだろ?」


「あっ!そうだった!ごめんなさい、リダ……。」


「いいよ、気にすんな。さっ、早く準備しな。」






手を引かれて立ち上がると、アンはクローゼットを開け、今日の洋服を選ぶ。


何度も繋いできたリダの手。


アンのより大きくて温かい、大好きな手だった。