…嫌ならはっきり言えばいいのに。 私は服をギュッと掴み 知らないフリをした。 ああ、私ってやな女だなぁ。 一言言えば良いだけなのに。 その言葉が出てこなくて 勇気がなくて 瞬を縛りつけている本当の理由は 私なんだ。 「実侑はどうしたいの?」 「どうって…婚約のこと?」 『婚約』、という言葉が 震えて私の口から出る。