「もしかして聞いてた?」





実侑はコクンっと静かに頷くと



何かを決めたように俺を見た。





「もう、恵には敵わないな」




そうフッと笑って



自然に笑顔から真剣な顔つきに



変わっていった。





「実侑、話せるようになったら俺に言って。


いつでも聞くから」




俺はそう言い



ふわっと艶のある実侑の髪の毛を触って



頭を撫でた。




「…絶対引かない?」





不安そうにそう呟く。





「当たり前だろ」





実侑はそんな俺を見上げてから



ゆっくり話し出した。




この時俺は実侑がどんな思いで





話したか。




どんな思いで





思い出したのか。






なにも知らなかったんだ。