リビングに入ると茜は
可愛い寝顔で寝ていた。
「私が思ったのはね
親がどうして実侑ちゃんに家を譲ったか。
普通だったら譲るんじゃなくて
一緒に住むでしょ?」
「確かに」
「それと、父親のこと」
姉貴がそう言うと映画館の事を思い出した。
あいつが走って帰った後
俺は見たんだ。
黒いベンツの車に乗っている男と
喋っているのを。
20歳を過ぎた大人に見えた。
誰だ?
兄か?
そんなの実侑から聞いたことがない。
だとしたら考えられるのは一つ。
茜の父親___
ずっとそれはないって思っていたけど
そう考えるのが普通だよな。
やっぱキツイ。
俺はきっとあいつが。
「聞いてる?恵!」
気付いた時には姉貴からのチョップが
俺に降り注いできた。
「いてーな!」


