「……じゃあ。行ってきます」 「……やだ」 「季蛍…」 「嘘、ごめん………。いってらっしゃい」 涙を拭ってやりたくなるほど頬は涙が伝っていた。 けど、もう拭うことはしない。 本当に行きたくない気になってしまいそうだから。 「………季蛍、今夜また電話で」 「うぅッ…………」 頷いた季蛍に背を向けた。 「……蒼」 背後に聞こえた声。 でも振り向きはしない。 「……出張に行くなんて…バカ」 行く間際に言われた言葉。 これは多分、季蛍の一番の本音なんだろう。 「……バカ。……バカ」