港くんは青いスクラブで、私と目があうとニコリと微笑んだ。
青いスクラブは、本当の手術室にいるみたいで、恐怖心をかき立てた。
体が硬直しているのがわかったみたいな港くんは、
「季蛍さん、力抜いててね」
と、優しい声で言う…。
「……あ、季蛍さん。縫うっていっても、何十針も縫う訳じゃないから。安心して」
「………はい」
いつもは、「大丈夫」「頑張って」
と言う蒼も、今日は怒って何も言わず、むしろ敵に回っているので、どうも落ち着けない。
「季蛍さーん、消毒するけど、大丈夫?」
…無理だ。
大丈夫な訳ない。
無理矢理蒼にやらされているのに、消毒なんて…我慢できる訳がない…。
「…………大丈夫です」
「………わかった、じゃあやるね。痛いかもしんない。ちょっと傷深いから。
まぁ麻酔してから消毒でもいいけど…」
そう言いながら傷口を生理食塩水で流している。
「……」
港くんは真剣そのものの顔で、ここから見える蒼は、私を睨んでいるようにも思えた。
つい、痛くて体がよじれてしまう。
「季蛍……。動くなっていっただろ」
完全に押さえつけられた私はもうどうにもできない。
「……いッ…やだ!、やだ…………」
港くんの手は止まらなかったし、蒼も、押さえつけた手を放さなかった。
「自分がいけない。ちゃんと言わないんだから。傷残ったらどういうつもりだったわけ」
……今日の蒼は完全に怒っているっぽい。


