「港いるー?」
「港知ってる人ー。」
ナースステーションから、医局まで隅々と院内を回るが…。
「……いない」
あの傷をみたら
「なんだ」だの「は?」だの「有り得ない」
だの声が漏れるはずが、怒りに怒っている俺は何も発さなかった。
なんだあの傷。
自分で処置した、とか言ってるくせに、止血しかしてないだろ。
俺の目をなんだと思ってるんだ、と少しふてくされ気味。
とにかく今は、あの傷をどうにもしないわけにはいかない。
あんな…大きな傷、跡が残ったらどうするんだ。
縫うかもしれないであろう傷を見て、頭をひねらせた。
縫うべきか、縫わぬべきか。
なんなら、経験のあるであろう外科の医師に聞くのが一番手っ取り早い。
……季蛍の親しい医師で外科で優しい医師は1人しか思い浮かばず。
港の仕事を増やすことになるんだけど。
「…あ。いた」
オペの終わった直後なのか、青いスクラブでマスクを外しながらこっちへ歩いてくる。
しかも、俺がみていることに気がついたのか、マスクをカッコつけて外したあと、どや顔の港。
全く意味がわからない。


