それから数分たって、季蛍がまたタオルを口にあてる。 「行けそう?」 ホントに小さく頷く季蛍を、ゆっくり抱えて車のドアを閉めた。 俺の腕の中で、タオルを口に当てる季蛍は、見ていられなかった。 「……蒼」 「どうした?吐く?」 「……違…」 「どうした?」 「…………ごめん」 なんに対してのごめんなんだかわからない。 でも、 「大丈夫。今は何も考えなくていい」 そう言えば、微かに微笑んだ。