「……指輪、家に忘れて」
「嘘でしょ?私?なんで?どうして?ヒック、ど…ヒック…」
また状況を把握しない季蛍が、指輪を忘れたことを言っている俺を聞かずに叫ぶ。
「どうして!?
なんで私なの?ヒック、蒼、私、え、なんで?」
「指輪忘れたから………。指輪の代わりに…」
「どうして?私なの?なんで?
どうし……─
指輪の代わり、と言っているのを聞いてなかった季蛍の唇を奪った。
季蛍が手にしていた携帯電話とハンカチが、音をたてて床に落ちたけど、そんなこと気にしてられなかった。
我に返った頃には…店内の人が俺らのプロポーズの一部始終を見ている訳で。
透明なガラス越しの通行人も、こっちを見ていた。
もう、二度とこの店には来れない、とその時思った冷静な俺。
唇を離せば、
「返事………、
オッケー……………だよ」
と、涙を流す季蛍が、俺の唇に口づけした。
外は、真っ白な雪が降っていた──────