「ちょっと兄ちゃん。そこいいか?」
思ったより優しい感じの声で彼は言う。
「………え?あ、あぁ……。すいません」
どうやら俺が立っていた向こうに家があるらしい。
「…すまねぇな」
と、俺の前を通った彼。
「……俺は若い女に手だしゃしねぇよ」
と微笑んだ彼は悪そうな人ではなさそうだ。
「…兄ちゃん、ここの姉ちゃん探してんのか?」
「え、えぇ。まぁ。知ってますか?」
「この姉ちゃん、今朝ゴミ置き場であったけどよ、なーんか体調悪そうだったよ。
おでこに冷えピタ貼って。……すごい汗かきながらゴミだししてたからねぇ。
彼氏?……なら早く助けてあげた方がいいかもしんねぇよ」
……と、彼は「じゃぁな」と手を振ると、廊下を歩いて家へと入ってしまった。
……おでこに冷えピタ?


