「抱くわけない………抱かれたりもしない」
蒼はいつも、思ってることがわかるみたいに不安なことを解いてくれる。
勝手に。
何も言わないのに。
『ひよりちゃんに抱かれている姿』
が未だ忘れられない私に、
「あのことは忘れろ。」
「抱かれたくて抱かれたんじゃない」
とでも言うように、不安を解くんだ。
蒼の隣はいつも頑張らなくていい。
蒼が全て、愛し愛されてくれる。
「……でも、でもね。蒼」
「……ん?」
「私だって……。頑張りたいよ?蒼だけが頑張るのも夫婦じゃない。」
「……」
「私も少しでいいから、蒼が『俺は季蛍に愛されてる』って思ってくれるように…頑張るね」
そう言えば、蒼が
「………じゃあ今、頑張って」
「……えっ?」
「季蛍からキス……。して?」
「……そ、それは」
「頑張るんでしょ?愛されてるって思えるように。俺が」
「う、うん…」