「ねー…。なんで高島なのー…」
「んー?おもしろそう。」
「あのなぁー、俺はおもちゃじゃないんだぞ」
「わかってるよ。」
一つの診察室のドアの前で立ち止まる。
コンコン
「失礼しまーす」
港のあけたドアの向こうには、いつも季蛍を診るあの高島が。
「蒼先生ー。怠いです?」
あの満面の笑み。絶対楽しんでる、高島。
港が、陽さんを椅子に座らせるかのように俺を患者用の椅子に座らせる。
……でも、よくよく考えれば。おかしいのだ、俺が後輩に診てもらうの。
港でいいじゃん……と呟く。
「後輩として、診ますから」
「……そんなこと言われてもさ」
だいたい、俺だって1人の人間なんだ。
いくら医者とはいえ、恥ずかしさという感情がないわけない。
「……蒼、ほら」
椅子に座って目を瞑る俺に港が背中をトントン叩く。
「だって高島……」
「俺だって蒼先生に診られたことあるんですよ」
「……それはそん時であって…」
「ブツブツ言わないの。ほら、白衣脱いでよ」
「…………」
「じゃあ白衣脱がなくていいんで、ワイシャツのボタン開けて下さいよ。ネクタイと」
「………ホントに高島なの?」
「はい。蒼先生に恩返しです」