「……蒼、いつもと雰囲気違うね」
涙目の季蛍が俺を見て言う。
「………出張だったし、白衣着てないからじゃん?」
「うん、そうかも。」
「…あ。そうそう、季蛍、心音」
ふいに思い出して、立ち上がり、カバンから聴診器を出した。
「呼吸苦しいみたいだし。酸素マスクつけるよ。季蛍。」
頷く季蛍。
季蛍の服の前を開けて、聴診器を滑り込ませた。
「季蛍…。緊張しすぎ」
「………だ、だってさ」
「…っていうか、息止めないでよ」
「あ、つい、」
「呼吸して……」
「……」
「……まだ息止めてるし。ほら、息吸って」
「…なんか上手く……出来ないっていう…か」
「まだ意識戻ったばかりだしね。わかったよ、じゃあ」
「何がわかったの?」と聞きたそうな季蛍だけど……。
ベッドに座り、季蛍を背後からそっと抱きしめた。
「いい?ちゃんと呼吸して……」
「……ッケホケホ」
「………できない?」
と言いつつも、季蛍の服の中に手を滑り込ませ、心臓の辺りを軽くさする。
「季蛍、力入りすぎ。リラックスしてよ…。俺なんだからさ」
「……だ、だって緊張してっ………」
「……ほら、ゆっくり息、してみて」
心臓の辺りをさすっているうちに、段々と、感じる心音。


