「季蛍。我慢しなくていいよ………。そんな呼吸辛そうな季蛍、見てられないって」
「……我慢なんか…」
「俺の前だからって…。我慢しなくていいから」
「……だって、せっかく、会え…たのに」
「俺、我慢させたくないから…。季蛍が辛いの、俺が笑って見届けてると思う?
そんなわけないだろ?」
「………酸素マスク、してても、好き?」
「………嫌いになる理由がない。好きに決まってる。嫌いになんて、なるわけない」
…俺の前で、いつも自分のことを気にする。
高校生のときからそう。
一番の自分であろうとする。
俺の前だから。
少しでも、違う季蛍だと…俺に嫌われるんじゃないかと思っている。
「素の季蛍でいいの…………。
我慢だなんてするな、もう。
楽で、いつでも素が出せて、居心地のいい、そんな居場所でありたいよ、俺の隣。
そんな隣にいるべきなのは、季蛍だけだろッ」
「…蒼」
季蛍の止まっていた涙がまた溢れ出した。


