結局、その日、フォルテュナはアンリの家に泊まった。
窓に映る色は、ずっとオレンジ色のまま…
その色の濃さが変わるようなこともなく、時計を見ても騙されてるような気分になってしまう程だ。

フォルテュナは、アンリといろいろなことを話しあった。
この世界の事、アンリ自身のこと、アンリが作ってくれた料理のこと…
いつもは人の話を聞くばかりのフォルテュナが、この日は自分から様々なことを話した。
フォルテュナのいた世界のこと、コトノハの泉のこと、そこに来る人間のこと…
ただ、フォルテュナ自身のことだけは話さなかった。

アンリの隣の部屋で、フォルテュナは質素なベッドに横になる。
この部屋の窓に映るのも、やはりオレンジ色の空…
時計は真夜中の時刻を指し示している…フォルテュナの瞼もくっつきそうだ。



(意地悪だね、君は…)



オレンジ色の空に向かって、フォルテュナは心の中でそっと呟く…
それと同時に、フォルテュナは夢の世界へ旅立っていた…







「おはよう、フォルテュナ。
よく眠れたみたいだね。」

「おはよう。」

フォルテュナは、こんなにも朝日が恋しいと感じたことはなかった。
今まで、ごく自然なことだと思っていた夜明けはこの世界には訪れない。
フォルテュナは、うらめしそうな顔つきで、窓の外を眺めた。



「……やっぱり、まだ慣れない?」

「一生ここにいても慣れそうにはないよ。」

「一月もしないうちに慣れるよ。」

そう言って、アンリは微笑んだ。



「それで…今日はどうする?」

「う…ん。」

フォルテュナは俯いてじっと目を閉じた。



「アンリ…僕、やっぱり、探してみる事にするよ。」

「探すって…ここに連れて来られた人を?」

「……いや…元の世界へ帰る方法を…」

「……泉に来る人間達にはうんざりしてたんじゃないの?」

「人間達のためじゃないよ。
……朝日が見たいから…夜の星が見たいから…」

「そんなことなら、簡単なことだよ。」

アンリの意外な答えに、フォルテュナの瞳が大きく開いた。



「……どういうこと?」

アンリは、にっこりと微笑んだ。