「フォルテュナ、本当になんともないのか?」

フォルテュナは俯いたままおかしそうに微笑んだ。



「君は見掛けに寄らず、心配性だね。
ほら、見ての通り、僕はなんともないよ。」

フォルテュナは両腕を広げ、おどけた顔で一回転して見せた。



「だったら良いんだけどさ…
昨夜は様子がおかしかったから…」

「……彼らはきっと幸せだったんだ…」

「彼ら…?
彼らって、誰のことなんだ?」

「……内緒だよ…」

「あぁーーーーっ!
なんだ、それ!」

朝日が上ってしばらくしてから、二人は眠い目をこすりながら長い長い螺旋階段を降り続けた。
ようやく下に着いた頃には、すでに昼近くになっていた。

二人はここに進入して来たコースを後返る。
城の廊下を抜け、雑草の生い茂る庭を横切りやっとの思いで城門に辿り着いた。
二人は瞳の上に手をかざし、先程までいた天上の搭を見上げるが、太陽が眩しくてよくは見えなかった。



「……宝物…なかったな?」

「宝物…?……あぁ…そうだね…
でも、上って良かったよ。」

「なんでだ?」

「だって……」



(君はきっと誰かに伝えたかったんだよね…)

フォルテュナは、ゆっくりと高い城壁を見上げた。
そこに刻まれた誰にも読めない天上世界の文字を…



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