ルシアンの異常とも思える希望により、搭の建設は夜も休まずに続けられた。
ルシアンは、その間、子供達やラーシェルと一緒に別荘で過し、その安らかで平和な毎日はラーシェルに搭の事を忘れさせるほどだった。



瞬く間に三ヶ月の月日が流れ、ラーシェルの元に搭がほぼ完成したという報告が伝えられた。
その間にも、空は暗さを増し、以前よりもなお一層長く垂れ下がっていた。



「ルシアン、搭はもう間もなく完成のようだよ。」

「ラーシェル…明日、戻りましょう。」

「明日?そんなに急がなくても大丈夫だよ。」

「いいえ…明日、戻ります。
ラーシェル…今まで本当にどうもありがとう。
あなたのおかげで私は幸せでした。
子供達のことをどうぞよろしくお願いします。」

「……ルシアン、何を言ってるんだい?」

「私は戻ったらすぐに搭にこもります。
しばらく、あなた方には会えません。」

ラーシェルは自分の推測が当たっていたことを実感した。
そして、今のルシアンには何を言っても聞かないであろうこともわかっていた。



「わかった。
天が落ちてこないように君は頑張るつもりなんだね。
子供達のことは心配ない…
君は君のしたいようにやりなさい。」

「ラーシェル…!」

ルシアンは、ラーシェルの胸に顔を埋めて泣いた。
ラーシェルは、彼女の背中を優しくなでながら、数ヶ月は会えないだろうと覚悟していた。
それが、ただの数ヶ月ではないことも知らないで…







「ジュネ、ラーク…
身体に気を付けて元気で暮らすのよ。
ラーシェル…子供達のことをどうぞよろしくお願いします。
ラーシェル…愛してるわ。」

代わる代わる二人の子供達を抱き締め、ラーシェルと口付けを交わしたルシアンは数人の使用人達に伴なわれ天にも届きそうな高い搭を上り始めた。



「母様~~!」

子供達は、頬を濡らしながら叫ぶように母親を呼んだが、それに応える声はなかった。