「う……うぅ…」

「お…おぉっ!
気が付いた!
少女が、目を開けたぞ!!」



ルシアンが目を開けると、そこには見知らぬ年配の男がいて自分に向かって何かを言っている。
男が外に向かって声をあげると、さらに数人の人間がルシアンの傍に駆け付けた。
その中の白衣を着ていた男性が、話しながらルシアンの胸になにかをあてた。
ルシアンは肌に金属の冷たい感触を感じた。



(ここは……)

あたりの様子を知ろうと、ほんの少し首を動かした途端、身体を酷い痛みが貫き、ルシアンは眉をひそめた。
身体のあちこちに包帯が巻かれていることに、ルシアンは気が付いた。



「どこか痛みますか?」

白衣の男の言葉は、ルシアンにはわからなかった。



「ここはどこです…?」

ルシアンがかすれる声でそう尋ねたが、周りの人々はきょとんとした顔をしていた。



「どうやら、異国の者ののようですな。
一体どこの言葉でしょう?」

「言語学者のウィリアムをこれへ!」



ルシアンはまだはっきりしない頭の中で考えた。
自分はなぜ、こんな所にいるのか…
酷い怪我をしていることは間違いない…


(そうだ!私は、禁忌の場所で…!)

あの時の恐怖の体験がルシアンの頭の中によみがえる。



(私…助かったのね…
そうか、この人達が私を助けてくれたんだわ。
でも、こんな人達に私は見覚えがないわ…)

ルシアンは、自分の周りにいる者達の顔を一人一人確かめるようにみつめる。
自分に向かって何かを言ってるのはわかるのだが、その言葉はルシアンにはまるで理解出来なかった。



(一体、どうしたっていうの?)

しばらくすると、白い髭の老人が来てルシアンの傍に座った。

「ウィリアム頼んだぞ!」

老人は深く頷いた。



「あなたはどこから来られたのですかな?」

老人はゆっくりとした口調で、ルシアンにそう尋ねた。



ルシアンには当然その言葉はわからない。



(そうだ!)

「私はルシアン。」

老人の顔が少し驚いたような表情に変わった。



「なんと申しておる?」

「少々お待ち下さい。」

老人は、ルシアンに向き直り、またゆっくりと話した。



「私、ウィリアム。」

それを聞いて、今度はルシアンの表情が変わる。



(この人は、私の言ってることがわかってるみたいだわ!)

「ここはどこですか?」

老人はその問いに少し戸惑ったような様子で少し考え、こう答えた。



「地上。」

その言葉に、ルシアンの瞳は大きく見開かれた。