(……ここは……?)



フォルテュナが瞳を開いた時、そこは白い世界からオレンジ色の世界に変わっていた。
陽の暮れを現すオレンジ色の空…

もちろんそこは、フォルテュナのいたコトノハの泉ではない。
あたりには人の気配もない。
フォルテュナの倒れていた場所はちょっとした空き地のような場所で、見渡す先には数軒の家が見える。
それがどこなのかは、フォルテュナには見当もつかなかった。

フォルテュナは、ゆっくりと立ちあがり、法衣についた土を払いのけた。
そして、自分のまわりに視線を落とす。
しかし、彼のお気に入りの白羽扇はどこにも落ちてはいなかった。
そのことに小さな溜息一つ…



(……僕はあの男に飛ばされたのか…)



コトノハの泉の最後の客…どこか、普通の人間とは違う雰囲気を感じたあの若い男…
彼が何者なのかはわからない。
だが、自分が今こんな所にいるのがその男のせいだということだけは、フォルテュナにははっきりとわかっていた。
どんな力を使い、何の目的で自分をこんな場所に飛ばしたのか…?
そんなことを今考えてもわかるはずがないことは明白だ。
身体を動かそうとしたフォルテュナは、自分の力が奪われていることにも気が付いた。
自分の身体が浮かないことに、フォルテュナはまた一つ溜息を吐く…



(とにかく…まずは、ここがどこかを調べるべきだな…)



フォルテュナは、先に見える家を目指してゆっくりと歩き出した。