「メリッサ、今の…あなたも見たわよね!?」

「え……?」

「見たでしょう?
果物が、地面に吸いこまれていくのを…」

メリッサは何かを考えているように、じっと一点をみつめていた。



「メリッサ!なんとか言いなさいよ!」

「……ルシアン、帰りましょう!
ここにいては危険だわ。」

「なにが危険なのよ。
あなた、どうしてそう怖がりなの?!
わかったわ、じゃあ、あなたはもう帰れば良いわ!
私、一人で見て来る!」

そう言うと、ルシアンは果実が沈んで行ったあたりへ向かって飛び立った。



「ルシアン、何をする気なの!
やめなさい!」

「私のことなら放っておいて!
メリッサの怖がり!」

後ろも振り返ずにルシアンは強い調子で言い放つ。
メリッサは、そんなルシアンの後を戸惑いながら着いて行った。



「確か、このあたりだったわ。」

ルシアンは、果実が落ちたあたりを爪先で小突く…



「やめて!ルシアン!!」

声を張り上げるメリッサの心配をよそに、白い砂のような地面には特に変化は見られなかった。



「もう少しこっちだったかしら?」

ルシアンはメリッサの制止にわざと反発するかのように、先程より深く爪先を差し入れた。

その時だった!
ルシアンの姿が、一瞬のうちにメリッサの視界からはずれた。
ルシアンの胸から下は、砂の中にすっぽりと吸い込まれていたのだ。
ルシアンは手を伸ばし、甲高い叫び声を上げて助けを求める。



「ルシアン、頑張って!!」

メリッサは、咄嗟に手を伸ばし、ルシアンの腕をがっしりと掴んだ。
だが、ルシアンの周りには何重もの波紋が広がり、波紋の広がりと共にその身体は少しずつ下に沈み込んで行く…
波紋は、渦を巻いているようだ。
渦を巻く波紋がいつの間にか薄紅色に変わっていた。