「うっ!」


扉を開けて部屋に入った途端、セスは顔に貼りついた蜘蛛の巣を払いのけた。
部屋には灯かり取りに使われていたかのような小さな窓しかなく、薄暗い。
かび臭い小部屋は、至る所に埃が堆く積もっていた。



「なんだか気の滅入る部屋だな。
きっとここには誰かが幽閉されてたんだろうな…」

部屋の中にはベッドと小さなテーブルと椅子が一脚あり、部屋の奥の扉はきっとトイレなのではないかと思われた。



「せっかくここまで来たのに、あれじゃあここからの景色が見えないな。」

小窓はセスが手を伸ばしても届かない高さにある。
何かを踏み台にでもしなければ、そこから外をのぞくことは出来ない。
しかも、今は外が暗いので、見るのは夜が明けてからになるだろう。



「あぁ、ランプの油を買ってから来れば良かったな。」

日が暮れるに連れ、部屋の中の暗さは増してきた。
何か使えるものがないかとあたりを探しているうちに、フォルテュナは、ベッドの脇のテーブルの小引出しに蝋燭があるのをみつけた。



「良いもん、みつけたな!」

蝋燭の灯かりに、部屋の様子が映し出される。



「ここに囚われてたのはきっと女性だな。」

「どうしてだい?」

「だって…見ろよ。
このベッドカバー…これはどう見ても女性のもんだろ?」

色褪せたベッドカバーは、きっと元は淡いピンク色だったのではないかと思われた。
今はあちこち破れてはいるが、よく見るとレースや刺繍がたくさん施されていた。

フォルテュナは、蝋燭の入っていた小引出しの下の引出しを開けた。
そこには、花の模様の細工が彫られた小さな小箱が入っていた。



「本当だ。
きっと女性だね。
こんなものがあったよ。」

フォルテュナは小箱を取りだし、その蓋を押し開けた。
それと同時に、美しいメロディが流れ出す…
どこか物悲しげなメロディだった。



「オルゴールなんだな…」

セスのその言葉を聞いた直後、フォルテュナは周りの空気が揺らめくのを見たような気がした。



そして、次の瞬間、彼の世界は白一色に包まれた…