「こっちだ!」

そう言いながら、セスがフォルテュナを案内したのは城の門ではなかった。
彼は、何度かここに来たことがあるらしく、塀がひび割れ中に入れる道を知っていた。
城壁の内部は、長い間、人が足を踏みこんだ形跡がない。
背の高い雑草が、伸び放題に広がっていた。
それらを手でかきわけ、踏みしだきながらフォルテュナとセスは歩いて行く…



「すごい所だね。」

「そうだな。
前に来た時より酷くなってる気がするよ。」

「君はここにはよく来るの?」

「よくってことはないけど、何度かある。
でも、のぞいただけでここまで入ったことはないんだ。
連れがいると、気が大きくなるのかもしれないな。」

「……友達と来たことはないの?」

「……残念ながら、こういう所に一緒に来る友達はいないよ。
あんたは友達は多いのか?」

「いや…僕には友達はいない…」

「そんなことないだろ?!」

「本当だよ。」

「じゃあ……俺は、何なんだ?」

「……え?」


(君は…僕の友達…?
そう思って良いの…?)



フォルテュナは心の中の疑問を口に出すことはしなかった。
セスもまた、フォルテュナにそれ以上答えを求めることはなかった。

お互い、どこか気まずい空気を感じながら歩く二人の前に、搭の外壁が現れた。
セスは、外壁の周りを調べている。



「外に扉はないから、中からじゃないと入れないんだろうな。」

そう言いながら、セスはあたりに目を配る。




「あ、セス!
あそこから入れないかな?」

フォルテュナの方が先に割れた窓ガラスをみつけた。



「そうだな、あそこから城の中に入って、そこから搭に上るか…
俺達、まるで泥棒みたいだな…!」

セスの微笑みに、フォルテュナが同じように微笑を返す。



「じゃあ、宝物をみつけたら山分けだね!」

フォルテュナの思いがけない冗談に、セスも、そしてフォルテュナ本人も驚き、そして次の瞬間、二人は顔を見合わせて微笑んだ。