陽の光に目が慣れて来ると、フォルテュナはあたりの光景に言葉を失った…



「こいつはどういうことなんだ…?」

セスの言葉の意味することが、この時のフォルテュナにはわからなかった。



「セス…ここは本当に洞窟の外なのかい?
……まさか、天国なんてことはないよね?」

フォルテュナは冗談のつもりで言ったのだが、セスの返事は意外なものだった。



「俺も…今、同じようなことを考えてたんだ…」

「……どういうこと?」

驚きを押し殺し、フォルテュナはセスにそう問い返した。



「……だって…
俺が、この洞窟に入る前には、こんな花畑はなかったんだ。」

二人の目の前には、まるでカラフルな絵の具で地面に絵を描いたかのような花の絨毯が広がっている。
花の周りには、甘い香りに誘われたのか、花と対をなすような美しい蝶が飛び交っていた。



「…じゃあ、君が洞窟に入ってから咲いたんじゃない?」

「俺が通った時は、ここらはなにもなかった…
洞窟に入ってから戻って来るまでせいぜい十日…いや二週間程経ってたとしても、それにしてもこんなに早く成長するもんなんだろうか?
まるで季節が変わったみたいだ…」

「季節が…?まさか…
……セス、とにかく人のいる場所へ行ってみようよ。
どこか、ゆっくりと手足を伸ばして寝られる場所があると嬉しいんだけど…」

フォルテュナは、出来る限りの平静を装ってそう言った。
セスの言葉は気になったが、今はそのことを考えたくない気分だった。



「町まではしばらくあるけど…
でも、手足を伸ばして寝る場所ならたくさんある。
それに太陽も出てくれるしな!」

フォルテュナとセスは顔を見合わせて微笑み、花畑の中をゆっくりと歩き始めた。