「じゃあ、行こうか…」



次の朝、フォルテュナとセスはドームから離れた。
あまり考えると決心が鈍るからと、セスに急き立てられるようにしてフォルテュナは歩き始めた。
セスの言った通り、フォルテュナが通って来た洞窟の反対側の通路には、涌き水の流れる場所があった。
そこで、新鮮な水を汲み、また真っ暗な狭い通路を歩き始めた。
二人の身体は、ロープで繋いでおいた。
迷うような場所はないとのことだったが、そうしておくことでお互いの存在がより一層強く感じられる。
狭い闇の中では精神的なものが一番の敵だ。
それさえクリアすれば、必ず外に出られる…
二人は、お互いを励ましあいながら外を目指した。

あたりの状況は変わらないというのに、二人一緒だと言う事、そして、通路に危険はないとわかっている安心感からか、洞窟に入った時とは比べ物にならない程、二人共リラックスして進む事が出来た。



「もう半分は超したんじゃないか?」

「だと良いんだけど…」



何日かが過ぎた頃、二人はどこからかそよいでくる風を感じた。
風は、甘い花の香りを共に運んで来てくれた。



「もしかしたら…」

二人の足が、自然と速度を増していく。
一歩…また一歩と歩を進めるごとに、洞窟に光りが差し込んで来るのを二人は実感した。
セスが駆け出し、二人を繋ぐロープが一瞬ぴんと張る。



「お…おい、セス…!」

フォルテュナは、引っ張られるロープにバランスを崩しそうになりながら、走り出した。
二人の目の前が急に明るくなり、二人は目を細める。



「フォルテュナ!!」

「外だ……!!」



二人の瞳から涙が溢れ出したのは、久しぶりに見た陽のせいばかりではなかった…