「こ…これは…!!」

ドームの中が明るくなるに連れ、セスはそこらに転がる亡骸に気が付き、青ざめた。



「……だから言っただろ?
ここは天国じゃない、地獄だって…」

「そういう意味だったのか…」

セスは立ちあがり、壁際の亡骸の傍に行くと、その場で両手を組んで祈りを捧げる。



「セス…」

その姿にフォルテュナは複雑な想いを感じた。



「可哀想に…こんな所で…こんな姿になって…」

セスは、亡骸の一つ一つに言葉をかけていた。



(……僕は…ただ、怖いと感じただけだったのに…)

フォルテュナは自分のことを酷くちっぽけな存在に感じた。
恥ずかしさと気まずさに、フォルテュナは俯いたまま、その顔を上げることが出来なかった。







やがて、時と共にドームの中は再び漆黒の世界に戻った。



「フォルテュナ…これからどうするつもりだ?」

フォルテュナのすぐ傍で身体を横たえたセスが呟く。



「……まだわからない。
どうすれば良いのか…わからないんだ…」

「あんたは、こっち側へ行きたいんだろう?」

暗い闇の中では指差された方向がわからないが、おそらく正しい方向を差しているのだと思ったフォルテュナは、答えた。



「そうだよ。
でも、頑張れる自信がない…」

「二人ならどうだ?」

「えっ…?!でも、君は僕とは反対側に…」

「そのつもりだったんだけど、残念ながら俺もここから一人で通り抜ける自信がない…
でも、二人なら…二人だったら、なんとか支えあっていけるんじゃないかと思うんだ。
もしも、ここから出られたら、僕はまたもう一度挑戦するつもりさ。
もちろん、今度は、もっとしっかりと装備を備えてね。
たった一度の失敗で、子供の頃からの夢を諦めるなんてのいやだからな。」

「君はとても強いんだね…」

「……強い?
ただ、諦めが悪いだけさ。」

フォルテュナには、セスの照れたような笑顔が見えるような気がした。