「……ごめんな…」

二人で抱き合い、涙が枯れるほど泣き尽くした後…
青年が、やっと口を開いた。



「……な…なにが?」

「突然抱きついて、突然泣き出して…
驚いただろ?」

「……そうだね。
でも、嬉しい驚きだったから…」

「俺も…!
もう、あんたが動物でも化け物でもなんでも構わないと思ったよ。
……情けないけど…俺、すごく怖くて…怖くてどうにかなっちまいそうだったんだ。」

その気持ちはフォルテュナも同じだった。

二人は、暗いドームの中で並んで座っていろいろ話し合った。
シルエットの男は、セスという男で、黄昏の町とは反対側の町から来たとのことだった。
元々、無鉄砲なセスは、暗闇の洞窟を抜けた先の町に子供の頃から関心があり、ついに足を踏み入れたは良いが、どこまで行ってもいつ果てるかもわからない暗闇続き…
ランプの油も食べ物もなくなり、不安に押し潰されそうな気持ちでやっとここまで辿りついたということだった。
フォルテュナは、持っていた缶詰をセスに差し出した。
セスのおかげで、フォルテュナも久しぶりに食べ物を口にすることが出来た。
今までは、何かを食べようという気持ちさえ失われていたのだから。



「ありがとう、助かったよ。
でも、大丈夫か?
食べるものはまだあるのか?」

「大丈夫だよ、缶詰はまだ何日分かあるから。
でも、水がもうあんまりないんだ。」

「水ならこの先に涌き水の出る所があったよ。」

セスの話によると、このドームまでの道は、黄昏の町からの道とほぼ同じと思われた。
人一人がやっと通れる程度の狭い一本道が、ここまでずっと続いていたということだった。