どのくらいの時が経ったのかわからない…
数時間だったのか、それとももう何日も経っているのか…
いつの間にか、眠っていたことにフォルテュナは気が付いた。
夢さえも見ない浅い眠りだった。



その眠りを妨げたものは、声…
泣き声のようでもあり、唸り声や叫び声にも聞こえる無気味な声…
それが、ドームの中に静かに反響して何層にも重なって渦巻いている…



(ついに、幻聴を聞くようになったか…)

フォルテュナは自分の精神の崩壊が近付いていることを感じた。



気味の悪い声は、少しずつ大きさを増し、それと比例してフォルテュナの心の均衡は崩れていく…



「や…やめろーーーー!!」

耐え切れず、フォルテュナは立ち上がって大きな声をあげた。
その声が、ドームの中に響いた直後、今度は別の声が近付いて来る。



「誰かいるのか?」



「……嘘…」

こだまが返事をしたことに、フォルテュナの頭は混乱し思考を止めた。



「誰か、そこにいるのか?」

その声と同時に、反対側の穴から何者かが飛び出して来るシルエットがぼんやりと見えた。



「だ…誰?」

フォルテュナは、高鳴る胸を押さえ、搾り出すような声でシルエットに尋ねた。



「あ…あぁ…」

同じような声をあげ、シルエットがフォルテュナに近付いて来たかと思うと、そのままフォルテュナの身体を抱き締めた。



「き…君…」

戸惑いながらも、久しぶりに出会った生身の人間のぬくもりに、フォルテュナは安堵し、同じように相手の身体を抱き締めた。
自分とほぼ変わらない背丈、そのすすり泣きの声から、相手が男性だということはわかった。
だが、そんなことは、今のフォルテュナにとってはどうでも良いこと…
この暗闇に、自分以外の誰かがいてくれるということが、ただ、ただ、嬉しく、フォルテュナは溢れ出る涙を止められなかった…