やっと出られる!
この暗くて狭い通路がやっと終わりを迎える!
フォルテュナは込み上げる涙を拭うこともなく、駆け出した。
光りに向かって…



「あ……」



フォルテュナは、その場に立ち尽くし、空を見上げた。
そこにあったのは、フォルテュナの期待した空ではなかった。

その場所は、自然に出来たものなのか、それとも人工のものなのかはわからない。
今までの通路とは比べ物にならない開放感のあるだだっ広いその空間は、ほぼ円形にくりぬかれたような形をしており、遥か上方はドーム状になっている。
その上方の斜面に幾つかの穴のようなものが開いているようで、そこから外の光が差し込んでいる。



「あぁ……」

ここが外ではなかったという落胆の声と共に、フォルテュナはがっくりと膝を着いた。
それでも、今までの狭い通路に比べると、この広い空間は気持ちの負担がまだずいぶんと楽で…
悲しいのやら嬉しいのやら、フォルテュナは自分自身の感情さえもよくわからない程、混乱していた。



あらためてその場所を見回してみると、自分が通って来た通路の反対側にまた同じような大きさの狭い穴が口を開けているのがわかった。
その他には何もない…
それは、ここから出て行きたければ、その先の通路を進むか、もしくは今まで通って来た通路を後戻るしかないということ…
光りの差しこむ場所は高過ぎて、とてもじゃないが上れそうにはなかった。



(あんな所から落ちたら…)

そう思い視線を動かした先に、フォルテュナはおかしなものを発見する…



(まさか……)

嫌な予感を胸に、フォルテュナは光りの差しこむ穴の真下に歩み寄る…

やがて、フォルテュナの足がぴたりと止まった。
色褪せボロボロになった衣服から伸びるのは白骨…
頭蓋骨は欠け、首のあたりでおかしな具合に曲がっていた。

フォルテュナは咄嗟に目を背ける…
だが、背けたその瞳は、壁際にもたれかかる別の亡骸を捕えた。
フォルテュナの心臓が、いつもより速く打ち始める…
逃げるようにその場から離れ、フォルテュナはあたりを確認しながら中央あたりにうずくまった。

フォルテュナは、白骨や、まだ骨になっていない亡骸が他にもあることを知ってしまった…
それらは、そのほとんどが壁際にあった。



(ここは、墓場だ…)

熱いものが、フォルテュナの頬を伝って落ちて行く…

やっとの想いでここまで辿りついたこの場所は出口ではなく…
絶望した者達はここから先に歩む気力を失い、進む事も引き返すことも出来ずに食べるものがなくなったか、或いは高い天井を目指し、またある者は発狂して命を落としたのだろう…
遠からず、自分もここに眠ることになってしまうのだと考えると、フォルテュナは動く事すら出来ず、ただ、ただ、涙を流すだけだった…