穴の中は、予想通りの狭い通路だった。
もしも向こう側から人が来れば、すれ違う事も困難だと思われる狭い通路の中を、ランプの灯かりだけを頼りにフォルテュナはゆっくりと歩いて行く…
しかし、行けども行けども何も変わった様子はない。
分かれ道はなかった…
だから、道に迷ったということはないとは思いつつも、相当歩いたにも関わらず何一つ変わらない状況にフォルテュナは焦りを感じていた。

もしかしたら、ここは黄昏の町と隣町を繋ぐ通路ではなく、別のものだったのではないか?
…そんな気さえしていた。
引き返そうかと思う気持ちの反面、もう少し進めば外へ出られるのではないか…そんな裏腹な思いも同時に混在し、フォルテュナは引き返す決断が出来ないでいた。

疲れや空腹のためもあるのか、狭い空間の閉塞感がフォルテュナの心を押し潰しそうになる…
それでも、なんとか自分を奮い立たせながら、フォルテュナは通路の中を歩き続けた。
少し休もうかと思うものの、もう少し行けば拓けた場所に出るのではないか?…そんな期待にも似た感情を覚え、フォルテュナは休みそびれていた。

しかし、それは期待はずれに終わった。
その後も周りの状況は変わる事がなく、疲労も限界に達したため、フォルテュナはついにその場に腰を降ろした。
壁にもたれると、まっすぐに足を伸ばす事さえ出来ない狭い空間でフォルテュナは水を飲み、アンリの持たせてくれたビスケットを一枚かじる。
ただそれだけでも、気分が少し落ち着いた。
缶詰もあったが、空腹の筈なのになぜか食欲がわかず、フォルテュナはその場でそっと目を閉じた。
少しこうしていれば、きっと身体の疲れも取れる…元気になれる…
そう考え、壁にもたれて座っているうちにフォルテュナはすっかり眠り込んでいた…