冬夏恋語り



今年の秋は飛ぶように過ぎていった。

紅葉を愛でる余裕もなく、食欲の秋も芸術の秋も堪能せず、秋風を感じる間もなく冬を迎えた。

次から次へと押し寄せる事柄をひとつひとつクリアして、なんとか落ち着いたと思ったら、もう次の事柄が控えていた。

大変だと思う間もなかったが、面倒な手続きに嫌気がさして逃げ出そうとも思わなかった。

一人で抱えていたら、とっくにギブアップしていたかもしれない。

亮君がいたから、寄り添ってくれたから、何事にもスローで決断の遅い私もやってこられた。

パートナーの存在は、こんなにも支えになるのだと、このひと月の出来事を思い出しては思うのだった。




様々なことが落ち着いたとある日曜日、私たちは従姉妹の家に招かれた。

4人が顔を合わせるのは二度目、ちいちゃんと脩平さんが亮君に会うのは、私が合コンで危ない目にあった夜以来だった。

「ユキちゃんお持ち帰り未遂事件」 と命名したのはちいちゃんで、私はそう言われるたびに恥ずかしさと後悔に襲われるのに、亮君は誇らしい顔をするがちょっと癪だ。

でも、あの未遂事件があったから、私と亮君の今があるともいえる。

笑い話にできるのも亮君のおかげよと、いまもって母からも言われるのだから。



可愛い盛りの大空君に笑顔で迎えられると、こちらまで幸せになってくる。

私のお腹はまだ目立たないが、来年の夏には子どもが生まれるのかと思うと不思議でならない。

亮君もそう思ったのか、これから大きくなるんですね……と私のお腹と大空くんを交互に眺めてまぶしそうな目をした。

お土産に持参したロゼワインを渡すと、脩平さんとちいちゃんは、ふたりだけにわかる笑みを見せ合って肩をすくめたため、どうしたの? と聞いたが 「あとでね」 と言うだけで微笑みの理由は教えてもらえなかった。




「亮君と脩平さん、意気投合したみたいよ。すっごく話が盛り上がってる」


「共通点でもあったのかな」



私とちいちゃんはキッチンの椅子に腰掛けておしゃべり、男性ふたりは大空くんを囲んで談笑中。

確かに、とても楽しそうに話をしている。

私の問いに、ちいちゃんがさも可笑しそうに口元を抑えた。



「フライングよ」


「フライング? あっ、あぁ、そういうこと」



思わず腹部に目を落とした。

そうだった、ちいちゃんと脩平さんもおめでたが先だった。



「私たち、子どもが先にできちゃったでしょう。

彼女の父親に会って挨拶をする緊張は、どんなものかわからないだろうって、脩平さんに言われたけど、 私にわかるわけないわよね」


「本当に理解するのは難しいけど、わからないでもないかな。ウチのお父さん、頑固だし」


「ははっ、そうだ。小野寺の伯父さんは別格よね。ねぇ、実際どうだったの?

病院に行って、その結果を持って伯父さんに挨拶に行って、怒鳴られながらも許してもらったって言ってたわね。

伯父さんの怒り、そんなにすごかった?」


「久しぶりに怒鳴られた。でもね、ホッとした」


「だよね、怒る人が怒らないと調子狂っちゃうものね」


「うん……」



ちいちゃんに話しながら、父と亮君が向き合った日を思い出していた。