キーンコーンカーンコーン

いつもは愛しいチャイムの音が
今は恨めしい。
理由は簡単で、
今は美術の時間だったから。

こんなに可愛い先生のことだ。
すぐに人気が出るだろうと思っていた。

しかし、
俺の予想とは裏腹に人気は全然出なかった。

別に特別嫌われてもいない。
だか、特別好かれてもいないのだ。

まあ、
俺もその方が何かとありがたいし、
先生も一番仕事がしやすいだろう。


教室へ戻ろうとすると、

「坂口くん」

橋本先生に呼び止められた。

高鳴る鼓動を抑えつつ、
後ろを振り返る。

「何ですか？」
「あのね、
今年の体育委員の子って、
全員陸上部じゃない。

だから、今日からしばらく陸上部のマネージャーやらせてもらうことになったんだ。

藤村先生にはもちろんお願いしてあるけど、主将の坂口くんにも伝えておこうと思って。

よろしくね。」

それって、俺の走ってるところを見られるってことだよな？
ちょーはずい。

そう思いながら、

「こちらこそ、
よろしくお願いします。」

と、できるだけ笑顔で返した。