「先生。
菅野先輩を泣かせたら、
許さないんで。」
しっかりと先生を見据えつつ、
口元を緩ませながら言った。

先生は少し馬鹿にしたように言う。

「おまえはボキャブラリーが
少ないらしいな。

なんだよ
その漫画の鉄板みたいなセリフは。」

俺が少し不満げな顔をすると、
先生はさっきの俺と
同じ表情をした。

「おう。
当たり前だ。

任しとけ。」


俺は菅野先輩に向き直る。

最後にこれだけは伝えなくては。

大好きだから、
「幸せになってください。」

「うんっ」


「坂口~」
倉庫の方から矢野の声がする。

矢野、ナイスタイミング!
さっきのセリフが
自分で言っておいて
かなり恥ずかしくなってきていた。

「やば、
すいません。

失礼します。」

菅野先輩に
おそらく最後になるであろう
一礼をして、

矢野の声のした方向に走った。

横目に見た
菅野先輩の赤い顔を
しっかりと頭に焼き付けながら。