ハァハァハァ

目の前にあるハードルを
1つ1つ
ていねいに跳んでいく。

俺がハードルを飛ぶたびに
小さく上がる
黄色い声と、ささやき声。

「さすが陸上部主将の坂口君。
人気者ですねー。」

クラスメイトで
サッカー部主将の矢野が
ゴールした俺に近寄って、
開口一番俺をからかう。

「おめーはいいな。
サッカー男女別で。」

基本体育は男女別なのに、
何故かハードルだけは
男女合同のうちの学校。

もし、サッカーも男女合同だったら
今度はこいつが
キャーキャー言われるんだろうな。

夏休みが明けて
秋の風が
気持ちよく感じられるようになった頃の
体育の時間。

それが俺が1年の中で

一番嫌いな時間。

普段無口な俺は
日常生活で騒がれたことが無い。

なのに、
女子とはわけのわからないもので
この時だけは騒ぎ出す。

どうせ、ハードルの授業が終わったら
見向きもしないくせに。