剱水のきもち~
あれから咲羅はまともに顔を合わせない。会話も少なく、俺から避けているようにもとれた。
「姫。」
「あ、ああ。高宮か。急いでるんでな~、そんじゃ!」
こんな会話なのだ。話し方も微妙に変だし、この時はそのあと走っていったのだ。
でも、頭を撫でたのは少しやりすぎたかな。
咲羅は姫なんだ。俺は執事。余計な感情を入れたらだめだと思ってたのに、そうはいかないかもしれない。押し殺すのに、必死だ。
「ん?」
窓からちょうど、この先にあるベランダが見えるのだが、そこに咲羅が上を見上げて立っていた。
するとよこにある、管をよじ登り始めた。
俺はなぜか体が動いた。今までなら気にも止めなかった。なのに……
俺も同じように登り始めた。意外に色々筋肉をつかう。
どれだけおてんばなんだ。と改めて思った。
すると自然に口元が緩んだ。
自覚はなかったが、そのまま登り続けた。