えっと、グランドは左かな。 講堂の前に置いてあった地図を見ながら進む。 野球部の練習場所でしょ。 「……花梨」 静かな声が聞こえた。 振り返れない。 振り返ったら、もう。 ───蒼太くん… 泣いちゃうから、ぜったい──。 「無視すんなよ」 「…してない」 「こっち向いて」 「やだ」 「なんでだよ」 あたしのわがままに蒼太くんが苦笑する。