雑居ビルの、2階。

診療所のある薄いドアの前に立つ。

バッグから鍵を取り出し、鍵穴に挿して鍵を開け、ドアノブを捻り。

「……?」

回らない。

ドアノブが回らない。

鍵が開いてない?

という事は、鍵がかかったという事だ。

さっき鍵を挿して開け…。

そこまで考えて、ハッとする美奈。

ドアに施錠されていなかったという事か?

出掛ける時に、きちんと戸締まりした筈だが。

気のせい?

鍵をかけ忘れた?

何か不穏なものを感じつつ、鍵をかけ忘れたのだろうという事にして、美奈は診療所の中に入る。