何故ここに?

先回りしていた?

いや待てと、美奈は考えを改める。

黒いセダンなんて、幾らでもいるではないか。

ナンバーを確認していた訳ではないから、この車が先程のセダンと同じとは限らない。

仮に同じ車だとしても、この雑居ビルには消費者金融なども入っている。

そちらの方に用があったのかもしれない。

債務者が路上駐車して消費者金融に足を運んでいるのも、美奈はよく見かけた。

きっとそうだ。

たまたま偶然が重なっただけ。

まだ胸の内にザワザワしたものが残っているものの、何とか落ち着かせ、美奈は非常階段をのぼっていく。