振り向かないまま、美奈は無言で歩く。

歩きながら、恐怖心に苛まれていた。

何故あのセダンは尾行してくるのか。

一体何者なのか。

せめて通り過ぎる時、車のナンバーくらい確認しておくべきだったか。

走って逃げるべきか。

しかし相手は車だ。

追跡するのは訳ない。

何人乗っているのか、乗っているのが男か女かもわからない。

男が四人も乗っていれば、降りてきて美奈を車内に拉致する事など造作もない。

こんな路地だ。

目撃者もいない。

助けも呼べない。

何とかして自力で逃げるしかないか。

鼓動が、早鐘の如く打つ。

美奈がそんな事を考えていた矢先!