ゆっくりと、歌舞伎町一番街を歩く巽。

そんな彼の耳に。

「!」

悲鳴が届いた。

多くの通行人が、雑居ビルを見上げている。

そのビルの二階、暴力団の事務所から、人が転落してきたらしい。

窓ガラスを割り、真っ逆さまに落ちてきた男。

頭部をアスファルトにぶつけ、顔面は血塗れ。

命に関わるほどの重傷だった。

「…誰か救急車を」

巽は努めて冷静に、通行人に言う。

その場にしゃがみ、その男に声をかける。

「おい、大丈夫か?」

「……」

巽に声をかけられ、目を開ける男。

彼は身を起こすなり。

「!?」

巽に摑みかかってきた!